これからのメディアのあり方

★SF的妄想能力で未来を編集して逆張りをする。その際に今見て置かなければいけないのが、ネットの発達によって実現した「原始人2.0」の時代。

個人が発信しものを作れるようになった。経済が右肩上がりで組織の中で1つの役割を全うしていればいい時代ではなくなった。

専門性を保ちつつ一気通貫出来る能力を持つべき。機能的な価値が飽和した以上、テクノロジーを活かすと同時に属人性・ストーリー・デザインなどが経営の中心となっていく。

amazon, セブン, etsy, kickstarterなど、全てその文脈に当てはまる。

※佐藤さんの「未来に先回りする思考法」も合わせて読みたい。 

 

【第一章】

◯従来のような「拡声器的なメディア」ではなく、個々人がSNS等を通じメディアになる

◯その変化に伴い、従来のメディアも、個人のメディアも、オウンドメディアも、構造的な変化を迫られ真の価値を訴求していく必要がある

◯具体的には、まずメディアが乱立することで「編集」という能力が価値になる。その「編集」によってお金を取っているしているのが昨今のキュレーションメディア

◯そうしたキュレーションメディアの台頭もあり、今はパワーバランスがプラットフォーム(メディア自体)よりもプレーヤー(コンテンツの作り手)に偏っている。コンテンツの流動性が高まり、「ギズモードの記事」というより「google glassの記事」「apple watchの記事」という形でキュレーションメディアに取り上げられることが多くなった。なのでギズモードとかではメディア全体への流入等より、1記事の価値をどう最大化するかという焦点を持っているらしい

◯またマネタイズについて広告の価値も変わってくる。従来は雑誌や新聞等に拡声器的に広告を出していたが、計測可能なオウンドメディア・webにシフトしつつある

◯これからのメディアの価値として、真にプロが目指すべきは「アートとテクノロジーの両立」である。従来はアート(いいコンテンツ)の割合が大きく、近年のキュレーションメディア等はテクノロジー(どんなセグメントにどうリーチさせるかDMPを用いて精度を上げていく)に寄りがち。なので真に価値あるメディアは、「編集力」により良いコンテンツを創出すると同時に、テクノロジーによってその価値を最大化できる層にリーチさせていく

 

【第二章】

◯メディア同様、ものづくりに関しても従来の大企業ではなくベンチャーや個人が強うくなっている。

◯モノ(家電など)は機能・デザイン面では差別化が難しくなってきており、そうすると差別化出来るのは思想・コンセプト・世界観という要素が強くなる。それは共創・愛・ストーリーによって実現される。

◯例えばコンビニ製品の商品開発はR&Dではなく消費者の声を反映してそれをオープン化しながら開発できるし、個人であればkickstarterなどを使いコンセプトベースで共感者から資金を集め、3Dプリンターの普及やオープンソース化などテクノロジーの進化を活かして個人(≒従来の大企業よりもずっと小さい規模かつ高い熱量を持っている)でモノを作り上げていく。ダイソーは、機能を徹底的に追求するという思想とブランディングでプレミア感を出し、「ダイソーとその他の家電」という地位を達成した。消費者はそうしたストーリーや思想に対してお金を払う時代だ。

◯上記のようなことが出来るのは、硬直化した大企業ではなく愛を持ってものづくりに取り組めるベンチャー・個人の方が強い傾向にある(ユーザーとの対話やデザインに力を置いているappleなどの大企業は例外)。

 

【第三章】

◯全体を見渡せる力が求められる。経済が右肩上がりでテンプレに沿って完璧な分業を行なう方が効率的だった時代ではなく、思想・設計・企画・デザイン・製作・マーケまで、どこかで特化しつつその全般もそつなく回せる能力が求められる(エンジニアだからマーケ全然わかりません、ではダメ。)

◯全体を見渡す能力は、ある意味「こうなるはず」という直感に近いものがあり、その感性の優れた人は身近なところからデータを引っ張ってくるのがうまいし、その人の予想はビッグデータ解析の先にある結果と往々にして一致したりしている。

◯その中でも一芸しかなくても生きていけるのは、営業能力。営業とは極めて属人的ではあるが、愛される能力と言っても良い。商店街の中でも唯一潰れないスナック、洋品店、理髪店のように、顧客と心のつながりを保ち愛されることのできる場所・人は普遍的に強い。

 

【第四章】

◯デザインが経営の中心となる時代が来る。機能と価格で差別化する時代は、海外生産等で「コストを抑え効率化するか」の勝負でしかなかったが、そこが機能的に飽和したものがあふれる以上、「ユーザーにとって心地よい」というデザインをストーリーとともに伝えられる企業が生き残る。例えば先進的な自動車メーカーは「交通事故をなくす」というデザイン(ユーザー目線で心地良い機能)を自動車設計に盛り込んで開発をしているし、スタバはロゴ・商品・接客など統一的に1つの流れで一貫したデザインを貫いている。

◯そのため経営層がデザインに対して理解がある(=デザインと経営が近い)、そしてその2つが翻訳によって繋がることが必須。ザッカーバーグシェリル・サンドバーグジョブズとクックのような関係性。日本企業はその点で大きく遅れている。(デザイン人材はいるがそれを活かせる経営層がいない)

◯デザインというのは論理。本当に優れたプロスポーツ選手は皆、なぜ優れているのかを理論的に言語化して言える。なんとなくの感性では済ませない。必ず仮説と検証を伴う。

 

【第五章】

◯企業において、属人的な力の重要性が高まる。特に日本では市場は縮小するし、外部環境は変わるしでこれまでのやり方が通用しなくなる以上、個人に掛けなければそれこそが最大のリスクになる。だから経営陣を始め個人が会議室にこもっているのではなく、全員現場を持つことが必須となる。

◯優れた企業は、「大きな物語」をつむぎ、その実現のために予測できない市場で「高速で属人的なものにPDCAを回しチャレンジし(5ヶ年計画は論外)」することが大事。もしその大きな物語を一人の大スターが紡いだのなら、後継者はそれを持続するロジックを確立しないといけない。

◯ちなみに属人的になる=ローカルになるという意味で、国の経済発展というのもかぶる。技術の進歩でフラット化したのは金の流れと情報なので、農業や工業などどこで作っても同じものを除いて、より属人性・地域性の違いが顕著になる。グローバル化しても、自然環境が違いすぎてアフリカはアジアのようには成長できない。

 

【第六章】

◯シェア&フリーのモデルが盛り上がりをみせている。例えば別荘にしても、個人で所有していることがステータスになる時代ではなく、シェアできるものはシェアしてより良い暮らしをという指向性になりつつある。

◯シェア&フリーという意味では、実はネット以前に本屋さんがその代表例である。ただし、漫画のビニールカバーがけなど、非常に前時代的(売上が伸びなくなるかも・・・という恐れ)なことが起きてしまっているのが勿体無い。フリーのマーケティングの機会を自ら損ねてしまっている。音楽の無料ダウンロードも同じ。「CDよりネットで聞くほうが便利だよね」という本質的な流れを見誤ると、全時代的な予防線しか貼ることができず取り残される。

◯前時代的な「べき論」にこだわると、取り残されていく。

【第七章】

 ◯どんなテクノロジーにより先立ち、未来を変えるのは「SF的編集能力」。星新一ドラえもんの文学的・SF的な「こんなのあったらいいなという未来」を実現するのがテクノロジー。その未来の妄想力・編集能力を個別具体的な形で切り取ってサービスに落とし込んだのがamazonであり、セブンであり、今絶大な影響力を持つ企業なのだ。

 ◯その未来を編集するには常に世の中の流れに気をつけるべき。特に本書で押しているのが、「わざわざ」という属人性。ネットの発展によって誰もが発信者・作り手に回れる時代だからこそ、barやスナックのマスターのような代替不可能な属人性を出していくことで差別化ができる。etsyの様な個人がものを作って売買するサイトは、その出展者のストーリー・属人性に大きく依存している。

◯つまり「SF的妄想力」で未来を編集しつつ、「属人性」で愛される村社会を構築して展開してく能力が経営者に求められる。特にネットの発展で感情垂れ流しの辛口評論家がはびこる中で(リアルにネガティブなことは言いづらいが、ネットなら簡単に感情をそのままテキスト化できてしまう。テキストの価値が下がっている。)、ポジティブな「こんなのあったらいいよね、こうあるべきだよね」を強力に推し進めることが必要。